恋愛しない結婚



週明けはかなり忙しくて、ここ数日の出来事が嘘みたいに仕事以外のことを考える余裕もない。

「昼ご飯、一緒に行きませんか?」

「一段落ついた?あと5分くらいで私も行けるから待っててくれる?」

葉山くんと一緒に進めている仕事は幾つかあって、今日の午前中も二人で会議室にこもり、資料を並べて処理していた。

午後からは奏の銀行との打ち合わせも予定されているせいで、なんだか仕事に集中できない自分も感じながら、どうにかお昼休みまで予定通りの仕事をこなすことができた。

二人でこもっていた会議室から出て食堂に行くと、やっぱり周囲の視線が気になった。

金曜日の奏のプロポーズ発言の影響はまだ残ってるみたいで、朝からもひそひそと私の噂は独り歩きしてる。

「やっぱり砂川さんの噂は広がりますね」

向かい合って座り定食を食べていると、葉山くんが呆れたようにつぶやいた。

「私みたいな中堅女のことなんて放っておいてほしいのに」

「まぁ、砂川さんは、仕事も男性以上にできるし綺麗だし。同性からはやっかまれますよね」

「は?綺麗なんてお世辞言っても何も出ないし仕事も減らさないよ」

うどんを食べる手を止めずに聞き流す私に葉山くんは少しイラッとしたように顔をしかめた。

「お世辞ならもっと濃い言葉を言ってますよ」

「濃い……?」

「砂川さんが恥ずかしくなるようなお世辞目一杯言ってもいいですか」

周りに聞こえないような小さな呟きだけど、私に向けたその言葉に箸を持ったまま呆然としてしまった。

「えっと……」

やけに勢いのある葉山くんの言葉に何も言い返せない。


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