嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

夜間の通用口からエレベーターを使い、レディスアパレルの階へと急ぐ。

薄暗くなったフロアには、自分の革靴の音だけが虚しく響いている。

足早に店の方向を目指せば、ぼんやりとそこだけに光が灯っていた。

(やっぱり、まだ残ってたのか…)

この調子じゃ、おそらく寧々も預けたままだろう。

まず初めに保育所に寄るべきだったなと思いつつ、俺は話し声の聞こえるバックヤードの方へ向かっていた。

「じゃあ、お子さんもいるんですから、これからはちゃんと、身の程わきまえてくださいよぉー!」

「それは、どういう意味?」

扉を開けようとしたところで言い争うような声が耳に入ってきたせいで、俺は思わず立ち止まってしまう。

この声は…エリカと白鷺ゆりだ。

白鷺はあれ以来冷たくあしらっているせいか、最近業務に対する態度が悪い。

その矛先をエリカに向けられたりしないかといつも気にかけてはいたが、俺のいないところでついに爆発したようだ。

ここでのこのこ俺が出て行っても、火に油を注ぐようなことになりかねない。

まさか白鷺も一緒に残っていると思わなかった俺は、完全に中に入るタイミングを逃してしまった。

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