悪魔なキミと愛契約~守るべきもの~


その時……。


「……サラ様」


梅雨の湿気を含んだ風に乗って微かに聞こえた気がして、執事を見つめた。


……サラ様。


なに……?


今あの人、あたしを呼んだの?


……気のせいだよね。


しかも、”サラ様“とか。


そんな呼ばれ方、生まれて一度もされたことがないし……。


黒羽くんと執事がどんな会話をしているかは、ガヤガヤと集まった生徒達の声で何も聞こえない。


執事は黒羽くんを車に乗せドアを閉めると、今にも泣きそうな表情で、ジッとあたしを見てきた。


確かに、あたしを見ている。


しばらく目が合い、そして、彼は深くお辞儀をし、ササッと運転席にまわり車を発進させた。


いつまでこの変なざわつきが続くんだろう。


いつになったら、”知ってる知ってる“と頷く自分がいなくなるんだろう。


あたし、何かの病気だったりして……。


病院に行って診てもらうべき?




< 15 / 296 >

この作品をシェア

pagetop