溶ける温度 - Rebirth -

「今日はもう閉店ですか、マスター」

「あー?…いや、予約はいってんだよ。23時過ぎに」


珍しい。そんな夜遅くに人がくるのって初めてだ。
でも今日は金曜日。会社員からしたら華金という言葉もあるぐらいだから、2次会でアヴァンシィを使いたいということだろうか。

先ほどのお客様が利用していたテーブルを濡れタオルで拭き、グラスを下げる。
流し台にグラスを置き、蛇口をひねると透明な水がグラスに注がれていった。

___開店前のもやもやした気持ちは一日働いたおかげで今はずいぶん落ち着いている。
あれから真さんもその話には一切触れず、なじみのお客様と談笑しながらいつも通り仕事をこなしていた。

カラン、と再びお店のベルが鳴る。私は流し台から玄関口へ足を進めた。
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