黄昏時に恋をして
変わらぬ愛
「それでは最後にメッセージをお願いします」
「馬が頑張ってくれたおかげで、有馬記念を勝つことができました。私に手綱を任せてくださった関係者の皆様にも感謝の気持ちでいっぱいです。また来年も温かい声援をよろしくお願いします」
「戸田貴大騎手のインタビューでした。ありがとうございました」

 ああ。もともと緩い涙腺が、さらに緩くなってしまった。そんな私に、大夢くんはそっとハンカチを差し出した。
「ありがとう」
「貴大に、笑われるよ」
「だって」
 大夢くんが夢を絶たれたのは、二十九歳の有馬記念。私たちの息子、貴大が二十九歳で有馬記念を初制覇したのだから、泣くなというのが無理な話である。
「だって」
 その隣で娘の葉月が、兄の初制覇に号泣していた。
「似た者親子だ」
 そう言って、大夢くんが笑った。
「泣くなと言うのが無理な話ですよ」
 さらにその隣に、大きなお腹を抱えた、杏ちゃんが号泣していた。貴大のかわいいお嫁さんだ。
「赤ちゃんがびっくりするよ?」
「嬉し涙だから、大丈夫です」
 何が大丈夫なんだろ? おかしくなって、泣きながら笑った。
 大夢くんと出逢い、一緒に歩き出した日々は、いつの間にか自分の人生の大半を占めるようになった。時には、辛く、哀しいこともあった。でも、大夢くんの隣にいると、それは本当にちっぽけで、振り返ると、幸せな日々で溢れている。
「もう少し、一緒にいたいな」
 大夢くんの隣でぽつりと呟いた。
「ほら、貴大が来た」
 さり気なく私の手を握って歩き出す。きっと、他の誰かじゃこんな気持ち、こんな歳まで持っていられなかった。ありがとう。大夢くん。これまでも、これからも大好きです。

(おしまい)

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