苦恋症候群


「あ、そういえばおととい、ウチの支店の三木くん引継ぎに行ったでしょ。さとり会った?」

「ぶふっ」



同期である麻智が唐突に振ってきた話題に、ストローで吸いかけていたスムージーを思わず吹き出しそうになった。

なんとか堪えて口の中の甘い液体を飲み込むことに成功するけど、盛大にむせてしまう。



「うわっ、さとり大丈夫?」

「げほ……ありがと麻智」



差し出されたポケットティッシュを素直に受け取り、口元にあてる。

そういえば、三木くんって麻智と同じ永田支店だったっけ。

すごくデキる後輩くんがいるんだよねーって、去年彼女が今の支店に異動したときにぼんやり聞いた気がする。



「ああうん、三木くんね……会ったよ、ちらっとだけ」

「そっかそっか。事務部と審査部って、階は違うんだっけ? 三木くんが木曜に引継ぎに行くって聞いてたから、『事務部に私の同期がいるからよろしくね~』って言っといたんだよねー」

「……そうなんだ」



そっか。だから三木くん、私の名前知ってたのかな。

今となっては麻智、余計なことを……って、ただの逆恨みだよねこれは。
< 15 / 355 >

この作品をシェア

pagetop