苦恋症候群


あの花火大会の日から、1週間が経った。

痛めた足は、次の日の日曜も多少痛みはあったけれど……月曜日には仕事に支障がない程度に回復したから、心底安心したものだ。


あの夜家に着いてから、麻智には『私が足を痛めて、三木くんが一緒に帰ってくれた』という内容のメールをしておいた。

その後、麻智からの興味津々の追及を覚悟してたんだけど……予想外に、足の心配をするメールがただ次の日に来ただけだったから拍子抜け。

もしかしたら、三木くんが先回りして彼女に何か言っておいてくれていたのかもしれない。

……そうは思うのだけど、あの日以来彼とは会社でも顔を合わせていないので、確認のしようもなくて。

花火大会の翌日送ったお礼のメールにも、返信がなかったから……直接お礼が言いたいのになって、ずっと思っていた。



「最近どーよ、サト」



唐突すぎるそんな言葉とともに、のし、と左肩に乗った重み。

私は心底迷惑そうな表情を作って、その重みの主を流し見た。



「なによヤス、質問がざっくりすぎ。ていうか腕退けて」

「んだよつれねぇなあ。飲んでる?」

「飲んでる飲んでる」



適当に返事をしながら、私は言葉通りソルティードッグの入ったグラスを傾ける。

今日は、久々の同期会だ。馴染みの居酒屋に、同期のうち予定が合った6人が集まっている。
< 179 / 355 >

この作品をシェア

pagetop