苦恋症候群
「私ね。正直、さとりと三木くんがうまくいけばいいなあって、思ってたんだよね」 

「え?」



麻智の突然の告白に、目を丸くする。

酔いの残る上気した頬で、彼女はふにゃりと力なく笑った。



「花火大会に、三木くんを呼んだのは……たしかに、共通の知り合いだからって理由もあったけど。でもほんとは、これをキッカケにさとりと三木くんが付き合ったりしないかなって、思ってたの」

「……麻智……」

「そしたらさ、大好きな同期にめでたくイケメン彼氏ができるわけだし。それにまた、4人でダブルデートとかも行けるし」



カチャン、と、麻智がスプーンを置く。

彼女の大好物なはずのマンゴープリンは、さっきから全然口に運ばれていなかった。



「……ごめん。私が余計なことしたから、さとりが悲しむことになった」

「麻智」

「ごめんね、さとり。ごめんね」



ぽろぽろ、ぽろぽろ。マンゴープリンを見つめる彼女の大きな瞳から、透明なしずくがこぼれ落ちる。

やさしい麻智の言葉と涙に、私は思わず微笑む。バッグの中から取り出したハンカチを、目の前の彼女に差し出した。



「なに言ってるの。麻智が謝ることなんて、どこにもないじゃない」

「さとり……」

「あのとき、麻智が三木くんを誘ってなかったとしても……きっと私は、三木くんをすきになってたよ」



そう言って私は、黙ったままの麻智に笑ってみせる。
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