苦恋症候群
「また雪、降ってきましたね」

「……うん」

「森下さん、寒くないですか?」



座っているラグは毛足が長くて気持ちいいし、エアコンがきいた部屋は、ぽかぽかとあたたかい。

私が首を横に振ると、三木くんは「そうですか」と小さく微笑む。

それからぎゅっと、自分の膝の上で両手の指を組んだ。



「今まで誰にも、話したことがなかったことなので……もしかしたらうまく、話せないかもしれません」

「っえ」

「……それでも、聞いてくれますか?」



頼りなさげに眉を寄せて懇願するように訊ねてくるから、私はなんだか泣きそうになりながら、こくこくうなずいた。

彼の話を一言半句聞き漏らすまいと、まっすぐにその顔を見つめる。


私の反応に、三木くんはまた安心したように笑った。

それからふっと、目を伏せる。



「……雪妃(ユキヒ)は……──俺の、義理の姉だったひとです」



──そうして、重い口を開いた三木くんが聞かせてくれたのは

とても切なくて、悲しくて苦しい

ある雪の日の、話だった。
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