苦恋症候群
ねえ、雪妃さん。

雪妃さんもきっと、三木くんのこの笑顔が、だいすきだったんでしょう?



「森下さんが言うように、誰にでも、しあわせになる権利があるんだとしたら……」



心地いい彼の声が、耳に届く。

私の涙腺、決壊しちゃったみたいだ。だってどんどん、溢れてくる。



「俺はあなたと、しあわせになってみたい」



ふたりの間を通り抜けた風が、溢れた私の涙をさらっていった。

視線の先で、彼が微笑む。



「すきです、森下さん。──愛してます」

「……ッ、」



その言葉を聞いた瞬間、私はぎゅうっと、三木くんに抱きついた。

突然だったにも関わらず、ちゃんと彼は抱きとめてくれる。



「み、三木くん……それってなんだか、プロポーズみたい……」



鼻をすすりながらのつぶやきに、私の髪を撫でながら今度はイタズラっぽく笑った。



「あれ。それくらいの、心積りですけど」

「ば、ばかぁ」



口では悪態をつくけれど、内心うれしくて仕方ない。

涙でぐちゃぐちゃになってる顔を見られたくなくて、三木くんの胸に隠れるようにしていた。

けれどそれを許すまいと、彼が私の両頬を包む。



「ほら、顔上げて。……さとり」



そう言って降ってきたキスは、今までで1番、甘くてやさしい。

……また屋上に、思い出増えちゃった。そんなことを思いながら、彼の胸もとにすがりついた。
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