まだあなたが好きみたい


道路の幅は3メートルほど。

そこに、ひしめくような数の居宅が両側から迫っている。


まさに、住宅地。



線路とを隔てるフェンスには、無理やりこじ開けただろうひとひとりがどうにかくぐれるだけの穴がひとつ大きくあいている。


ペンチで切ったからなのか、それとも風に晒されたからなのか、なんだかすごく粗末な感じ。



向こう側には道が続いているけれど、あれは普通、あれで行き止まりなんだろう。


それはここも同様だ。

そもそも、フェンスがある時点でここから先へは言ってはいけないというれっきとした警告だ。



それをあろうことか無視し、くぐり抜けて突っ切れ、とあの駅員は言ったらしい。


それで得心がいった。


数分前、どうして彼がひどく憚るような言い方をしたのか。



彼の言う近道は道なようで一部道ではなかったのだ。


踏切までの道を惜しみ、直接線路を跨ぎ越すという離れ業―――つまり、違反のススメだった。



だが菜々子は不謹慎にもどきどきした。


こんなこと、生まれて一度もしたことがない。


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