まだあなたが好きみたい


彼の願いは当初、とりあえず友だちになることだった。


それが達成できなかったのなら、こういう結末になったのもわたしに非はないし、落ち度はむしろあんたにあると主張するのは傲慢だろうか。



菜々子はふたりから目を逸らし、瞼を伏せた。



ひどく心の狭い人間になったとおもった。



……やっぱりたのしくないじゃん、こんなこと。



胸の中、煙を吸い込んだ後みたいに、咳が出そうで出ず、いやな翳りがこごってる。



木野村は前に進んだ。あの笑顔はほんものだ。

彼女との居心地の良さに安堵して、支えられて、不安が払拭された背筋はなにをしなくたってピンとしてる。



…でも、わたしは――。



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