桜の木の下で-約束編ー







「和喜、危ないわよ」


待ち合わせの交差点前。

有香さんが、
ボクの体を咄嗟に引き寄せる。


「……有難う……」

「言いわよ。

 幾ら、YUKIが身軽で運動神経がいいって言っても
 車と喧嘩は洒落にならないわ。

 交通事故なんて御免よ」

「うん」


言われるままに、有香さんの車に乗り込んで
現場へと向かう。



いつものように、
YUKIとしての姿を形どり、
何時【いつ】もの仮初の日常に
自分自身の心の許す場所を求める。




仮初の時間。




その時間だけボクは……
鬼を忘れ……焦がれ続ける
……人と慣れる……。



現【うつつ】の夢に溺れながら……。





心は、この季節のように少しずつ
凍りついていく。




ボクは
どうしたらいい?


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