桜の木の下で-約束編ー

5.嵐の訪れ 長き夜の始まり -和鬼-



あの日から何度も何度も
朦朧とした意識の中、
繰り返し見る同じ夢。



それは今もボクの心の奥底で
許しきれない、親友【とも】殺しの罪を抱いた時間。



呪いの様にボクが見続けるのは、
鬼狩の剣が風鬼の血を吸った時間。


風鬼の血が、
刃を伝って地へと染み込んだ。



『風鬼……。
 君はボクを恨んでいるの?

 君をボクが手にかけたのは、
 親友【とも】の願いだったから。

 何度も何度もボクに言い聞かせるけど、
 ボクはボク自身が許せない……』



今も風鬼を手にかけた瞬間を思い出す。




何度目かの夢に魘されて、
目を覚ますボク。




ボクの視界には、
古びた狭間の廃屋。


見慣れた景色に安堵する。




あばら家の一室、
板を重ね置いただけのベットに体を横たえて
倒れてしまっていたボクは、
ようやく体全身に血が行き届いたのを感じて体を起こした。




紅葉と呼ばれた少女との出逢いは
ボクを狂わせていく。



紅葉の奥に潜む鬼が、
本当に風鬼だと言うのか?



風鬼は、
ボクがこの手にかけたはずなのに。




紅葉と出逢ったあの日、
いつものように気配を感じで桜鬼神として向かった。



そこで出逢った幼い少女は、
何処か寂しそうに見えた。


そして少女はボクの血を欲した。



少女の後ろから感じるのは、
かつての親友であった風鬼の気配。


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