桜の木の下で-約束編ー

17.沙羅双樹に抱かれて -和鬼-



ボクの終焉に咲を巻き込んじゃいけない。


そしてこの地に生きることも、
親友【とも】も。


この地の繁栄は今のボクの魂は願い続けてる。


桜鬼も、国主としての和鬼も
どちらも紛れもないボクだと親友が受け入れてくれた。

それでもボクは、
この地に留まることは出来ないから。


水龍の告げた終焉が
ボクを急き立てていく。




後は……最後の仕事を終えるだけ。




もう一人の親友の元へ、
最愛の人を送り届ける。


紅葉と言う名を持つその人が
風鬼を見失って、迷子にならないように。


「桜鬼神っ 同族殺し、友殺しの汚名を
 背負い続けた気分はどう?

 誰も鬼の世界に、
 貴方はの味方は居ない。

 私から風鬼を奪った貴方だもの、
 誰も裁けない鬼なら、
 私が裁いてやりたいって思ったの。

 国主様も行方不明のこの世界だから」



そう言って、憎しみの言葉を紡ぎながら
肩を震わす紅葉。



「ボクは君を裁くためにいるわけじゃない。

 ボクも君もずっと誤解していた。

 その力を屠るボクですら、
 その力の意味を見誤ってた」

「何よ。

 どんなに正当化しようとしても、
 貴方が風鬼を殺した事実は変わらないわ」


紅葉はボクを睨み付けながら吐き捨てる。


「桜鬼神の力は、守るための力。

 その人の魂を救うための力」


そう……ボクの中でも、永い時間の間に
いつの間にか歪められていた桜鬼の力。



初めて、鬼狩の剣を創世したのは
龍神たちが降り立つ故郷。



王と認められし、
その国主の体内から創生して
我身を鞘とする民を守るための剣。



その剣の力は
いつの間にか人々の中で意味を変えた。



だけど……今は、
その本当の意味を思い出したから。



最後の最後に、ボクは国主にも、
桜鬼神にもなれる気がする。
 

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