桜の木の下で-約束編ー


事務所公認の証に、
その記者会見の場に集っていたのは、
トパジオスレコードを経営する華京院。

オフィス・クリスタルの経営陣には、
伊舎堂【いさどう】・早谷【はやせ】・三杉【みすぎ】・紺野【こんの】・瑠璃垣【るりがき】が
名を連ね、それを取り仕切るのは、トパジオスレコード傘下の十六夜【いざよい】グループ。


それぞれの財閥の経営陣も顔を並べた
異色の記者会見。

その記者会見が、ある意味ビジネス業界においての
圧力の一つだと知ったのは、
その記者会見を見た司のボヤキから。


その記者会見の圧力は、私の想像を超えるものだったみたいで
ここ聖フローシアに置いても、上級生・同級生共に
ビジネスのパイプがある一族の御令嬢は、
一気に態度が急変して私に優しくなった。



まさに鶴の一声。



一学期までの疎外感が一気に消えて、
聖フローシアが私の学校だと
感じることが出来るようになった。




和鬼はYUKIとしての仕事の合間に、
ふらっと学園に姿を見せては、
シスターの許可を得て、
私を指名して学園内を散策する。



「YUKI、咲さまとお幸せに。

 次回の新曲も楽しみにしています」


少しでもYUKIに近づきたいと思う
女生徒たちが、ゆっくりと近づいてきて声をかける。


そんなファンの女の子たちに、
YUKIは優しく微笑み返す。


それだけで黄色い悲鳴をあげて、
女の子たちは盛り上がる。



私の通学時間もまた、
タイミングさえあえば


「咲、有香が言ったんだボクに。
 咲のボディガードもつけましょうか?って。

 だから今日は、ボクがボディガードだよ。
 時間が許す限りだけど」

なんて無邪気に笑って、
私が通学する山道を一緒に下山していく。


下山して門の前に姿を見せた時には、
周囲はプチパニック。


だけど和鬼の魅惑の笑顔は、
シスターをも虜にするみたいで
固まったまま、
じっとYUKIとしての和鬼の姿を見つめ続ける。



「はいっ。

 ちょっと貴方、今、YUKIの許可を得ずに隠し撮りしましたわね。
 ファンのマナーの心得が足りませんわ。

 その画像を削除して、隠し撮りではなく正々堂々し
 YUKIに申し込みなさい。


 はいっ、そこの貴方。
 ちゃんと整列しなさい、YUKIの前ではしたないですわ」


門の前で一切を取り仕切るのは一花先輩。

そして一花先輩の斜め後ろで、
溜息を吐きながら、サポートする司。
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