モテ男とバレンタイン
「……もったいないよね」
「何が?」
「チョコレートだよ。一哉に渡そうと思って張り切った子たちもいるはずなのに、本人は全然食べないんだもん」
「しょうがねーだろ。俺は甘いもの嫌いなんだから」
「それはそうだけどさ……」
あたしだったら、嫌だろうなと思った。
頑張って作って受け取ってもらったとしても、それを実際に食べているのはどこぞの幼なじみの女なんだもん。
そりゃあ腐って捨てられたりするよりは、誰かの胃に入った方がマシかもしれないけどさ。
やっぱり渡す側の気持ちとしては、本人に食べて欲しかったと思う。
たとえそれが本命だろうと義理だろうと、手作りだろうと既製品だろうと。
……いつからだっけ。
一哉が貰ってきたチョコレートを、こいつの部屋であたしが食べるようになったのは。
きっかけは、一哉がバレンタインになるとたくさんのチョコレートを貰うようになったからだったと思う。