僕の玩具箱。
オレンジ。(同性愛有)

「貴方の寿命は、長くて1ヶ月です」

突然の言葉、頭が上手く働かない。
言葉を受け入れられない。

私が、死ぬ?
1ヶ月で、死ぬ?

私の頭は自分の死の事ではなく残されたあの子の事ばかり考えていた。

もう、私達に明日が来ないかも知れない。
突然、私が死ぬかも知れない。

『…そうだ、隠してしまおう』

あの子を悲しませないように、
私が最期に見る顔は笑顔が良いから。

『……でも、なにか残しておこうかな』

私はレターセットを取り出した。
残されるあの子に、私の気持ちを。

“元気でいますか”
“笑顔は枯れていませんか”
“他の誰かを深く深く愛せていますか”

一文字、一文字、書く度に涙が溢れてくる。

『やだ…誰かに渡すなんて…絶対嫌だ…!!!』

どんなに泣いても、私は死ぬ。
どんなに泣いても、この想いは消えない。


“ねえ、ここから、教会近いんだって、行ってみない?”

突然の誘いに驚いた。
だけど、行ってみることにした、
"一生の思い出"になるかも知れないから。

「……を、愛する事を、誓いますか?」
「誓います。」

結婚式の、誓いの言葉が聞こえる。

“すいません、ヴェール貸してください”

君は、借りてきたヴェールを私に被せる。

“私は、貴方を愛する事を誓います”

ちょっと拙い、誓いの言葉。

『ずっと、一緒にいようね』

君への、初めての嘘。

素敵な結婚式の隣でひっそりとやる、
小さな結婚式、とても幸せでした。

“教会の近く、四つ葉のクローバーがあるんだって!
見つけて、病気が治るようにお願いしようよ”

泥々になりながら、クローバーを探す私達、
ごめんね、病気、治らないの、

空が遠く、狭くなっていく。
意識が、途絶える。


泣かないで、私は幸せだった、
君に逢えて、君と笑って、君に恋して、
とても、幸せだった、

君と、本当の結婚式、したかったな。
でも、もう、無理みたい。
サヨナラの時間だね、
もし、生まれ変わったら真っ先に、
君に逢いに行くよ。


…幸せに、なってね、
ただ、それだけを祈ってる。
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