KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―


「さて、ドレスアップも済んだことだし、次は……」

「次は?」

結局、服は買って貰った上に、元々私が着てた服はクリーニングに出してもらえ、後日自宅に郵送までしてもらえることになってしまった。

私としては、思わぬ厚待遇にオロオロと恐縮し通しだ。

なのにも関わらず、これ以上彼は何をしようと言うのだろうか?


不安9割のドキドキを感じつつ、自らもking crownの服に着替えた春斗さんに訊ねる。


その回答は聞かずに済むなら聞かないままでやり過ごしたいけど……



でも、きっと無理だろうな。

この短時間で痛感したけど、この人、暴君だし。

きっと、もう決めていることなら、私が何を言ったところで、この人はやる。


なら、腹をくくって話を聞いて、覚悟した方は利口というものだろう。



「そりゃあ、ドレスアップしたら、次は舞踏会に決まってるだろ?」

「ぶ、舞踏会!?」

いやいやいやいや!!

決まってないでしょ!!

ってか、舞踏会っていつの時代の何処の国の話だよって感じだし!!

少なくとも、私のスケジュール帳に、そんな優雅なイベントが書かれた事はないから!!


「じょ、冗談ですよね?」

「大真面目だ」


そこは敢えて冗談であって欲しいと言うか……。

「外も暗くなっきて、お腹も空いてきた事だし、メインディッシュと行こうか」

「いえ、私はもう前菜だけでお腹一杯状態なんで」

「君のその慎ましい態度も魅力的だけど、ここは素直に甘えておいてくれ」


「あの、別に慎ましいとかそういうんじゃなくて……」
「夜は意外と短いものだ。さぁ、行こうか」

「…………」


誰かお願いだから、彼に人の話を聞くというスキルを教えてやって下さい。


ってか、『素直に』っていうなら、お願いだから私をもう帰らせて!!




そんな私の心からの願いも空しく、私はその『舞踏会』とやらに連れて行かれるはめになったのだった。
< 45 / 67 >

この作品をシェア

pagetop