イケメン王子の花メイド






ふぅと小さく息を吐く。

くるりと踵を返して私はメイドルームに向かって歩き出した。



横山さんのこと、知れて良かった。

好きだと言って…良かった。


俯いたまま歩いていると、段々と視界に映る床がぼやけて見えてきた。



ずっとずっと好きでした。


……今日で、この恋を諦めます。



私は思わず口元を緩ませた。


…フラれると分かってても、こんなに辛いものなのねぇ。



フラれ……たのね、私。

横山さんのこと、諦めなくちゃいけないのよね。




「……うぅ…」




じわぁっと目頭が熱くなる。

目には涙が溜まっていく。


口元は歪んだまま戻らない。



泣かないように…してたのになぁ。


私はゴシゴシと袖で涙を拭う。



…だって、本当に横山さんが好きだったものぉ。

大好きで大好きで…すっごく大好きだったんだものぉ…。



……失恋ってこんなに辛いものなのねぇ。

私、初めて知っちゃった……。


初恋だったのにね。



横山さん、

どうか幸せになって下さい。


奥様もきっと、お喜びになられますよぉ。




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