イケメン王子の花メイド





「あのね、お母さんの手紙を渡して下さったの」


「…手紙?」


「うん。私、ここに来て6年になるんだけど、泊まり込みで働いてるもんだからお母さんとは数回しか会う機会がなくてねぇ」




ということは茜さんも高校生の頃からここで働いてるの?

あれ、でも馨様は若い子がメイドになるのは初めてって…。




「私、働き出したのは18歳からなの。高校卒業するまでは通い込みで来てて、前川さんや横山さんからメイドのことやレッスンを受けてたの」




長いまつ毛を瞬かせながら、茜さんはふんわりと微笑んだ。




「私の家はお父さんがいなくて、お金に困ってたの。それでお母さん、前川さんと仲が良かったからそのつてでここに通って…」




つまりはそういうことらしい。

母子家庭である茜さんは高校を卒業するまでの間、友人であった前川さんにメイドとして働けるように教えを受けていたという。


しかし母親のいる家に戻ってここに来てとちまちま働くよりはここに泊まり込んで働く方がいいと考えた宮本家。


たまにしか会えないけど、二人が安定して過ごせるようにする為であった。




「それでお母さんとこうやって手紙を綴りあってるの」


「そうだったんですか…」


「まあ3年くらい教え込まれてたのにいざメイドとして働き出しても未だにミスは多くしちゃうんだけどねぇ」




やんなっちゃう。と明るく笑う茜さんにつられて、私も笑った。



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