あかつきの少女

14歳

足取りは軽く、自然と歩幅もいつもより大きくなる。



踏み出される足はリズムを刻み、踊るように歩く。



まだ朝早く、時おり聞こえる車の走り去る音は、朝独特。



肺一杯に、朝の空気を吸い込んだ。



待ち合わせ場所に向かう者は、だれでも同じように心弾むのだろうか。



ただ彼女の場合は、少し特別だった。



久しぶりに友人に会える。



その想いのみが胸に広がっていた。



確かな人影を捉えた彼女の目はさらに光輝く。



上がる口角を、なんとか隠そうと下唇を噛み締めた。



走り出す。



先に着いていた少女も、彼女に気付き大きく手を振った。



「雫!!お待たせ」



「ハロー 、ヨウ。別に待ってないよ」



呼吸を整える楊子を、雫はやさしく見つめる。



「小学校卒業以来だね」


「雫背、伸びた?」



しっかりと横に並んでみれば、10センチはあったはずの身長差が縮まっていることに気付く。



でもまだ楊子の方が少し高い。



「まあね。中二ですもの」



「なーんか悔しいな」



「いまに追い越しちゃうかもよ?」



「それはあり得ないって」



二年の歳月など、彼女たちの前では無いも同然だった。



笑い合い、ゆっくり歩き出す。





「好きだったんだよ」



「なにが?」



まだ朝早いため、ファミリーレストランなどの類いは開店前。



二人は仕方なく近場の公園にいた。



ブランコとベンチくらいしかない、小さな公園。


変色した木製のベンチに腰かけると、楊子は静かに言葉を紡いだ。



「雫のことが」



どこか遠くを見つめ言う彼女の横顔は清々しく、なにかに追いつめられたような陰は全く見えない。



ただ淡々と真実を語るかのようなその雰囲気に、雫も呑まれるだけだ。



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