あかつきの少女

先生!!

入学式も終え、先生と初めて会ったときから二ヶ月が経っても、少女の胸は先生でいっぱいだった。


加南子は深緑のブレザーに身を包み、期待に胸を膨らませながら門の前に立っていた。


加奈子が深緑の色から連想することは一つ。


受験のときに出会った女性教師のことである。


「数学の担当、先生でありますように!」


そう小声で言いながら、右足から門をくぐる。


小学生のときからたまにしているちょっとしたおまじないである。



加南子は教室に着くまでの間ずっと、先生のことを考えていた。


入学式中、校長が挨拶している間、あの先生の姿を探していた。


すぐに、体育館のステージ下に並べられたパイプ椅子の一つに座っている彼女を見つけ、ずっと見つめていた。


もちろん目が合うことは一度もなかったが、見つめているだけで加南子は幸せで胸がいっぱいになった。



そんな加南子のドキドキしていた胸が、さらに鼓動を速め、血液が全身に送られるのが分かるほどになった。


まるで体温が2度一気に上昇したかのようにすら感じられたのは、


「先生……。」


彼女が廊下の向こうから歩いてくるあの先生を見つけたからである。


「あ、笹木!」


先生は加南子を見つけると、立ち止まり、おはよう、と笑顔で挨拶した。


加南子は、思わず頬に両手を添える乙女のポーズをしそうになるのをグッと堪え、おはようございます、と返した。


すると先生は先ほどの笑顔とは違う笑みを浮かべた。


すこしイタズラっぽく笑う先生の表情に、加南子はドキドキして、釘付けになった。


「入学式のときさ」


「え?」


突然脈絡のないワードが先生の口から出てきて、クエスチョンマークが浮かぶ。


「見てたね?」

その言葉に思考が一瞬で巡り、真っ赤になった加南子を見て、さらに続けた。


「なんか熱い視線を感じるなと思ってたんだよね。
……受験のときから。」

加南子が目に見えてうろたえる。


「この前もそうだけど、笹木って私のこと一一」


「先生!!」

それ以上言葉を続けないように、両手を先生の口もとにあてた。


少し驚いたように加南子を見たが、加南子の頭は思い切り下を向いていたので目線は合わなかった。


そんな加南子を見て、
“面白い子が入って来たな”
と先生は思っていた。



先生!!END
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