あかつきの少女
「なんだか違うの」



言葉にうまく表せないといった面持ちだ。


小冬は普段あまり読書したりすることは今までなかったため、鈴実に自分なりの考え方を伝えることも出来ない。



そもそも小冬は、外国人作家の本なんて、絵本くらいしか読んだことがなかった。



日本の絵本と外国の絵本の内容を比べてみたりもしたが、やはり違いが分からない。



そんな自分に、小冬は歯痒さを覚えた。



「そうなんだ…」



それ以上話を膨らませるような言葉は返すことができなかった。





その日から、小冬はよく本を読むようになった。


学校の図書室から、教室に置いてある学級図書。


休みの日は図書館にまで足を運ばせ、目についたものは一通り読んだ。



物語からエッセイ、図鑑。



紙にかかれているものは、ひとつ残らず的確にとらえる。



その表情は、どこか鈴実にちかしいものがあった。



そんな日が、一週間、二週間、三週間と続いたある日。



図書館で読む本を探していた小冬は、見慣れた後ろ姿を見つけた。



推測が確信に変わると、その人物を見つめたまま、手に持った分厚い本を棚に押し込んだ。



静かにその背中を追いかける小冬の表情は、読書をしているときよりよっぽど楽しそうで、生き生きと輝いている。



「鈴実ちゃん」



声をかけるか迷いに迷い、しかし、やはり見なかったことになど出来なかった小冬は、小声でそう呼び止めた。





明くる日。



小冬は昨日会ったということを話しかけるタネにした。



「あのね、前言ってた外国人作家と日本人作家の違いも分かったよ」


努力の甲斐あってか、先日よりも会話が弾み、その手応えが嬉しくて、笑顔を浮かべた。



そして鈴実も、小さく微笑む。



「どうかしたの?」



先日と内容自体は変わらない会話だったのにも関わらず、鈴実は違う反応を見せた。



そのことに小冬はさらに胸を弾ませ、そのわけを知るために問うた。



それは彼女という人を、もっと知りたいがための問いだった。

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