私たち、政略結婚しています。

夜の繁華街の混雑にタクシーはなかなか進まない。

「混んでるな~。お客さん、距離がちょっと伸びるけど緑町の方から抜けてもいいかい?」

運転手さんが尋ねてくる。

「あ、はい。お任せします」

秋本くんが答えるのを聞きながら窓の外を見つめる。

今頃、克哉と中沢さんはお互いに同じ店にいたことに気付いたかしら。
そのまま二人でマンションに帰るのかしら。

私には秋本くんがいるからと安心してそのまま彼女を受け入れるのだろう。

克哉の指にも彼女と同じ指輪が光る場面を想像してハッとする。

私…。まだそんな事を考えて…。
忘れたいのに、頭の中は克哉のことばかり。

未練がましくて、自分が嫌になる。

これからずっとそんな事を考えながら過ごすのかな…。




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