私たち、政略結婚しています。

全てを終えて、他人になる。
もう、抱えているには重過ぎる。

克哉への気持ちに押し潰されて、息切れを起こしてしまう。

選ばれないのなら、捨て去るしかない。

このまま終わって、心の中の克哉にまつわるものを全て思い出に変える。


「克哉」

私は目の前でこちらに向かって走ってくる彼を呼んだ。

「…佐奈」

克哉は私の顔を見ると、足を止め、一瞬驚いたような顔をした。

「何を…してるの?」

私が訊ねると、眉尻を下げて、泣き出しそうな目で私を見つめた。

そんな彼に対し、私は彼を睨むように見つめ返した。


私が彼に最後にしてあげられること。


私は全然大丈夫。あんたなんかいなくても平気。
私には秋本くんもいるし、あんたなんか好きじゃない。
あんたも中沢さんと幸せになりなさいよ。


…どうか、私がそう思っているとそんな風に思ってほしい。

今まで…―――ごめんね。



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