私たち、政略結婚しています。



ため息をつきながら携帯を何気なく手にするとメールが一通入っていた。


『克哉。

明日は土曜だから休みよね?
二人に話があるから父さんとマンションに行くわね。

母』


母さん?
話…。
何だろう。


いずれにしても盗聴器だけは探し出さないと。

俺は慌ててリビングに戻ると、亜由美が仕掛けたと言っていた盗聴器を探し始めた。

あの日は玄関から入ってリビングの入り口で少し話して帰ったから範囲は限られている。

家具の裏や、カーペットの隅なんかを必死で探す。

「…どこだ?」

しばらく探すがどこにもない。

もう無理かと諦めかけた瞬間に、ふと突然思い当たり上を見上げた。

「…あ」

ドアの上の壁。

小さな磁石みたいなものが目に入った。

「…これか」

そっとつまんで取り外す。

潰したりしたら亜由美にバレるな。

それをそのまま冷蔵庫の中に入れてドアを閉めた。

こんなもので何を知りたかったのか。会話を聞いて俺に合わせても、気持ちまでは動くはずなどないのに。

亜由美の薄気味悪い執念に若干の寒気を感じる。



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