私たち、政略結婚しています。


「克哉!大変よ!マンションが…!」

その時、前方からお義母さんが傘を片手に息を切らせて走って来た。

「母さん?どうしたんだよ」

克哉が訊ねるとお義母さんは震える指でマンションの方を指差した。

「……え…」

白い煙が空に向かって伸びている。

「火事…?!」


私達はそれを呆然と見つめる。


「私を捨てたらどうなるか、思い知れ!」

マンションの入口から何かを叫びながら中沢さんが出てきた。

「亜由美?!何をしたんだ?!」

克哉が彼女に駆け寄る。

そんな克哉を見て、彼女はふわりと笑った。

「克哉、戻ってきてくれたのね?そうなのね?
やっぱり私が一番なのよね?」


「お前、何を…!」

「中沢さん…!」


するとパトカーが一台、私たちの隣に停まった。

「大丈夫ですか!」

警官に聞かれた瞬間、消防車もけたたましいサイレンと共に現れる。
その中から数人の消防士が降りてきて私たちの部屋の窓に向かって放水を始めた。



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