私たち、政略結婚しています。
「なあ、佐奈。お前、意識を失う前に俺に言ったこと……覚えてるか?」
「えっ……」
――雨の降りしきる中。
夢中で気持ちを伝えたあの瞬間。
藁にもすがる思いで、克哉にしがみついた。
小さな少女が駄々をこねるように泣きじゃくった。
「………覚えていないわ」
私が照れて目を逸らすと克哉は怒ったように言う。
「ふーん……。あっそ…。
その程度かよ」
ドクリと胸が揺れる。
「違うの!!だから、あの……、私……」
焦って彼の服を掴んだ。
また離れそうになる背中を見つめて過ごすのは嫌だ。
「……ふっ……、ふはははっ」
克哉はそんな私を見て笑い出す。
「なっ…何よっ……」
私が掴んだ服を離そうとしたら、その手をパシッと握る。
「素直になれ。お前が望む通りにしてやるから。その方が得だぞ?」
魅惑的な笑みを湛えて囁く。
私の強がりが勝る訳などない。