私たち、政略結婚しています。



「ねえ、浅尾さん」

秋本くんが私を小声で呼んだ。

「…えっ、な、なに」

克哉から目を離さないままで返事をする。他のメンバーもそれぞれが何かしら会話をしている。

「ふふっ。…そんなに見つめると伊藤さんに穴が開くよ」

「えっ!!」

私はドキッとしながら彼の言葉に過剰に反応して彼を見た。
そんな私を見ながら童顔な秋本くんの顔がいたずらに輝いた気がした。楽しいおもちゃを見つけた子供みたいに。

「その様子だと相変わらず意地ばかり張ってるんでしょ。何の進展もないみたいだね。二人が仕事のケンカばかりだって噂はしょっちゅう聞いてるから」

「な、な、な!なに…」

「バレバレなんだよね、浅尾さんって。伊藤さん大好きですってオーラ出まくりだからさ。まあ、それが分かるのは俺限定だろうけど」

言いながら秋本くんは可笑しそうに笑う。

「俺さ、以前浅尾さんに興味があったからさ。かなりマジで。
だから分かっちゃったんだよね、あの頃。浅尾さんの気持ちが。今は遠恋の彼女がいて幸せなんだけどね」

「き、興味って…そんな。大好きオーラって」

思わず腰を抜かしそうになった。
彼からそんな事を言われるような空気になったことなんて一度もない。

以前、何度か帰宅がたまたま重なって飲みに行ったことがあったのだけれど。
もちろん、克哉を含めた大人数でだ。

大勢でワイワイと騒いだ記憶しかない。


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