チェンジ type R
第一章
 朝の静かな光景にやってはいけない事、それはやっぱり大声で叫ぶ行動なワケで。

 私の不用意な行動はこの全く見知らぬ家の人間を起こしてしまったワケで……。

「隼人? どうしたの? こんな朝っぱらから――」

 玄関から奥に続く廊下の向こうから現れたのは――お母さん?お姉さん?
 ジャージ姿で、目の下にクマを作った、ちょっと疲れ気味な表情の女の人だった。
 背中の辺りまで伸びた長い髪はその美しい艶とは対照的なハネが所々に見える。
 何と言うか……悩みでも抱えて掻き毟った跡のように見える。

 もっとパリっとした格好をしていればかなりの美女になるであろうその女性の言葉から、この身体の持ち主の名前が『隼人』ということが分かった。

――って、冷静になってる場合じゃない!!

 いきなり知らない人の身体の中に入っちゃってるし!
 いきなり見ず知らずの人と対面しちゃってるし!
 こんな場合に一体どう行動すれば良いって言うのよ!?

 状況をこれ以上複雑にするのは得策じゃない。
 とりあえず

――この見ず知らずの『隼人くん』になりきってこの場をしのがないと――って、そんなことできるのか?
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