負け犬も歩けば愛をつかむ。
そんな休憩はあっという間に終わり、皆で再び身支度を整えていると、本社ビルの廊下へ繋がるドアが開かれた音がした。

誰だろう、と思ったのは一瞬で、「もしかしてマネージャーさん?」という真琴ちゃんの一言で、その存在を思い出す。

すぐに休憩室のドアがノックされ、その一番近くにいた私は躊躇わずにドアを開けた。



「はい?」

「こんにちは」



──セクシーさを感じる低い声が鼓膜を揺すり、ダークグレーのスーツが目に飛び込む。

そして目線を上げた私の心臓は、またもや乙女のように飛び跳ねた。


ナチュラルな短めの黒髪に、まったく汚らしくない口元の髭がよく似合う、端正な顔。

……まさか、こんなことってある!?


この瞬間に感じたトキメキみたいなものが、“運命”というやつなのかもしれない。

だって目の前に現れた人は、昨日コンビニで会った、あの素敵な男性なんだもの!!



「はじめまして。今度から担当になるマネージャーの椎名です。……休憩中だったかな?」



帽子とマスクに覆われた私の顔は、見開いた目だけしか見えないだろう。

そのまま固まっていた私を、小首をかしげて不思議そうに見る彼に、はっと我に返った。

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