負け犬も歩けば愛をつかむ。
つい先日、ついに三十歳を迎えた私。別に高校生なんて興味ないし、どう思われようと構わない。

牛丼よりはオムライスの方がお洒落さはあるだろうけど、それを買ったところで“この人可愛いな”とか思われるわけでもないし。

ていうか、まずビールが可愛くないって、ビールが。


それでもこんな些細なことを気にしてしまうのは、一応まだ私にもある“乙女心”ってモノのせいなのよ。

ぼんやりとそんなことを思いつつ、接客中のイケメン君が待つレジへ向かうと。

左からやってきた男性とタイミングが重なり、同時に並ぼうとしてしまった。



「あっ、すみませ──」



顔を上げてその人を見た途端、自称乙女の心がドキンと高鳴った。

そこにいた長身の男性は、ダークグレーのスーツをびしっと着こなし、整った精悍な顔立ちがワイルドで素敵な人だったから。

な、なんて男前……!!



「こちらこそすみません。お先にどうぞ」



ふわりと品良く微笑み、セクシーさを感じる低い声で促してくれる。

特別なことをしたわけでもないのに、その行いはとてもスマートに見えた。

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