負け犬も歩けば愛をつかむ。
押し黙る私に、今のが図星だったと確信したらしい水野くんは、腰に手をあて得意げな笑みを浮かべる。



「よーし決まり。今度歓迎会とでも言ってマネ誘おうぜ」

「それいいわねぇ。千鶴ちゃんの歓迎会もまだやれてないし」

「ふむふむ、それでお持ち帰りっていう流れに……いいっ! やりましょやりましょ~♪」

「勝手に盛り上がらない!!」



私の叫びも虚しく、どこでいつやるかと盛り上がる三人にため息をついた。


たしかに私は元から積極的なタイプではなく、どちらかと言うと受け身だし、気になる男の人を自分から誘うなんてことはしないと思う。

だから誰かがきっかけを作ってくれないと、何も進展しないだろうってことはわかる。

でもこの人達に任せておいていいものか……。



「ちづ、まずはマネに連絡先聞いといてよ」



悶々と考えながらごしごしとまな板を洗っていた私に、水野くんが最初のミッションを言い渡す。けれど。



「あぁ、それならもう教えてもらったけど」

「マジ!? ちづ……なんだかんだ言って結構やる気じゃんか」

「そーいうんじゃないっつーの!」



今度はこのまな板で頭をはたいてやりたい衝動を抑えつつ。

彼らのお節介ぶりに言い様のない不安と、心のどこかでほんの少しの期待を抱くのだった。




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