負け犬も歩けば愛をつかむ。
初々しいカップルをのほほんと見送っていたら、お目当ての人物がすぐそばに来ていたことに気付かなかった、おバカな私。
「あ、椎名さ──!」
声を掛けられて振り向くと、いつものスーツ姿ではない貴重な私服姿の彼に、目がくぎ付けになってしまった。
ネイビーのカーディガンに白のカットソー、グレーのチノパンという至ってシンプルな服装なのだけど。
や、やっぱりカッコいい……!
特にすごくオシャレっていうわけじゃないのに、何故か洗練されて見える。
男前は何をしても男前なんだということを改めて実感しつつ、いつもの職場とは違うシチュエーションに、一層胸が高鳴ってしまう。
「もしかして俺のために待っててくれた?」
申し訳なさそうにこちらへ歩み寄る彼に、惚けていた私ははっとして手と首を横に振った。
「は、はい! でも全然気にしないでください!」
「悪いね、ありがとう」
本当は皆に言われたからだけど、そんなことはバカ正直に言わないでおこう。
そして会話が途切れると、その一瞬のうちにどんどん緊張感が押し寄せてくる。
たぶん気のせいだとは思うけれど、椎名さんがじっと私を見ているような気がするし……。
「じ、じゃあ行きましょうか! 予約の時間になっちゃうから、皆先に行ってくれてるんで──」
「待って」
歩きだそうとしたその瞬間、私の手首が彼にきゅっと掴まれた。
「あ、椎名さ──!」
声を掛けられて振り向くと、いつものスーツ姿ではない貴重な私服姿の彼に、目がくぎ付けになってしまった。
ネイビーのカーディガンに白のカットソー、グレーのチノパンという至ってシンプルな服装なのだけど。
や、やっぱりカッコいい……!
特にすごくオシャレっていうわけじゃないのに、何故か洗練されて見える。
男前は何をしても男前なんだということを改めて実感しつつ、いつもの職場とは違うシチュエーションに、一層胸が高鳴ってしまう。
「もしかして俺のために待っててくれた?」
申し訳なさそうにこちらへ歩み寄る彼に、惚けていた私ははっとして手と首を横に振った。
「は、はい! でも全然気にしないでください!」
「悪いね、ありがとう」
本当は皆に言われたからだけど、そんなことはバカ正直に言わないでおこう。
そして会話が途切れると、その一瞬のうちにどんどん緊張感が押し寄せてくる。
たぶん気のせいだとは思うけれど、椎名さんがじっと私を見ているような気がするし……。
「じ、じゃあ行きましょうか! 予約の時間になっちゃうから、皆先に行ってくれてるんで──」
「待って」
歩きだそうとしたその瞬間、私の手首が彼にきゅっと掴まれた。