負け犬も歩けば愛をつかむ。
「ひぁ!? せっ、専務!?」



思わず変な叫び声をあげ、後ろの棚にぶつかりそうなほど後ずさる私。

びっくりした! びっくりしたぁ!!



「ななな何でいるんですか!?」

「ここは僕の職場なんだから、いて当然だろ」

「ででででも何で私に話し掛けたりなんか……っ!」

「“いかにも”な香水を選びそうだったから、背伸びはやめた方がいいってことを教えてあげようかと思ってね」



にこりと微笑む彼の言葉を聞いて、グラマラスボディ型の香水を持っていることを思い出しはっとする。



「違う! 違うんです、これは!」

「隠さなくてもいいよ。春井さんにも誘惑したい彼がいたんだね」

「ちょっとどんな匂いか気になっただけです!!」



かぁっと顔を熱くしながら慌ててボトルを棚に戻すと、専務はクスクスと笑う。

あ~もう、何でこんな時にこの人に会っちゃうのよ……! 昼間あんなことがあっただけに、なんだか気まずい。



「童顔で色気がないコがあんな香りを付けていても逆効果だ。自分に一番似合った香りを漂わせている方が、男は惹かれるものだよ」



……アドバイスしてくれるのはありがたいけど、結構失礼なこと言ってますよ?

言葉とは裏腹な王子様スマイルを向けられて微妙な顔をしていると、彼は突然私の手を取る。



「へっ!? な、何を……!」

「じっとしてて」

< 85 / 272 >

この作品をシェア

pagetop