負け犬も歩けば愛をつかむ。
「そんな可愛い声出されると、本当に止められないよ」

「う……」

「嫌なら抵抗して」



そう言いながらも再び唇を塞ぐ彼に、めちゃくちゃになりつつあった思考回路が動き出す。


嫌なんかじゃないよ。だって大好きな椎名さんだもの。

でも、こんなことするの何年ぶり? もうどうヤッていいか忘れてるんじゃないの、私……。しかも今日の下着何だっけ?

ていうか、それ以前に!

椎名さんには他に好きな人がいるんだから、私とエッ……チするってことは、セフレになってしまうというわけで。

三十になった女が、そんな曖昧で不届きな関係を始めるってどうなの?

私は椎名さんとそんな関係になりたいわけでもない。

好きな人とのエッチには正直飢えているけれど! やっぱりここは堪えるべきでは……!?


そんなことを考え出して、急に現実に引き戻された私は。

Tシャツの中にするりと入り込んだ彼の手が素肌に触れた瞬間、理性のスイッチが入ったようにぐっと彼の胸を押し返した。



「や……っぱり、ダメ!」



思い切って言うと、少し身体を離した椎名さんが神妙な表情で私を見つめる。



「わ、私こういうコト久しぶりで、どうしたらいいかわからなくって……。椎名さんが嫌ってわけじゃ全然ないんだけど、椎名さんとそういう関係にはなりたくないっていうか……!」

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