吐き捨てられるくらい





「あーあ、子供見たいね、私」

「俺としては嘘をついて笑っていられるより、今の姿を見られて良かったと思うけれど」

「泣けないくらい、あいつのことを憎んでやればよかった。けど」

「何事もそう上手くはいかないよ、真琴」






 一緒にいた間は、本物だったのだ。
 嘘じゃない。
 私だって彰吾のことを好きな時期もあった。確かに。
 
 一緒にいたとき、私は笑っていたのだ。
 確かにあった。

 どうしてこうなったかなんて、わからない。わかりっこない。
 わかりたくないけど、そういうものなのかもしれない。



 好きじゃないよ。
 好きじゃない。
 ――――好きだった。



 確かにあの時、私は彰吾のことが好きだったから笑っていたのだ。けれどそれがいつしか変わってしまって、まるきり私自身が別人になってしまったみたいになって。

 考えれば、おかしい。
 好きだった、はずなのに、私は。




 貴方を憎んで、大嫌いだお前なんか、と吐き捨てられるくらい、本当に嫌いだったら良かったのに。

 けれどそれが出来なかった。
 何故。
 好きだったから。確かに。
 あの時の、私は貴方を。
 貴方が好きで、笑って毎日が輝いて見えていた私も。


 そう思う私は、胸に残る冷たさをそっと温めるような敦司さんのぬくもりに、目を閉じる。










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