小咄

とある保育園の教育事情<年齢逆転Ver.>

【キャスト】
保育士:深成・六郎 園児:真砂・捨吉・あき
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「今日は雨だから、皆お部屋で遊ぼうね~」

 しとしとと雨の降りしきるある日。
 保育園では子供たちが元気に走り回っている。

 小さな保育園なので、人数もそう多くない。
 大体三歳から五歳ぐらいの子供が、部屋の中で思い思いに遊んでいる。

 その部屋の隅では、一人の男の子が絵本を読んでいた。

「まさごくん、あそぼうよ~」

 他の子が誘っても、顔も上げない。
 皆暇を持て余して駆け回っているのに、真砂だけは、ずっと隅に座り込んでいる。

「じゃあ皆、お部屋の中でかくれんぼしようか。ほら、真砂くんも」

 六郎が皆を集め、真砂にも声をかけるが、真砂はちらりと顔を上げただけで、また絵本に視線を落とした。

「どうしたんだい? お腹でも痛い?」

 六郎が近づき、真砂の前に屈み込んだ。
 ふるふる、と真砂が首を振る。

 一応返事はするが、依然目は絵本に落としたまま。
 一緒に遊ぶ気はないようだ。

「駄目だよ、ちょっとは皆と遊ばないと。君、いっつも一人じゃないか」

 六郎が、よしよし、と真砂の頭を撫でた。
 が、その途端。
 真砂が、ぎっと六郎を睨み付けた。

 そのあまりの鋭い視線に、思わず六郎は手を引っ込める。
 まだ五つの子供とは思えないほどの、相手を射るような目だ。

「六郎先生、どうしたの?」

 はっと我に返れば、同じく保育士の深成が、ててて、と駆け寄ってきていた。
 その後に、わらわらと子供たちが引っ付いてくる。

 深成は子供に大人気だ。
 深成自身が幼いのか、子供たちと変わらず一緒になって楽しそうに遊んでいる。
 今も鬼ごっこで遊んでいた捨吉を追いかけがてら、六郎に声をかけたのだ。

「あれ真砂くん。どうしたの、遊ばない?」

 ぴょこん、と真砂の前に座り込む。
 すると深成が追いかけていた捨吉も、てて、と戻ってきた。

「みなりちゃんせんせい、おにだから、にげないとつかまっちゃうよ~」

 言うなり真砂の手を引いて走り出す。
 しぶしぶ、というように、真砂は絵本を抱えたまま、捨吉に引っ張られて駆けていった。
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