小咄

とある二人の年末年始

【キャスト】
mira商社 課長:真砂 派遣事務員:深成
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆

「うわぉ。寒いと思ったら~」

 十二月三十日。
 朝起きるなり、深成はカーテンを開けて、叫び声を上げた。
 外は真っ白である。

「う~ん、まだ積もってはないみたいだけど、凄い降りだなぁ。こりゃ積もるな~」

 暖房をつけ、ごそごそと再び布団に潜り込む。

「困ったなぁ。おせちのお買い物に行かないといけないのに」

 布団の中で、うさぎを抱っこしながらごろごろしつつ、深成は枕元に置いていた携帯を手に取った。

「……課長、起きてるかな」

 明日は約束しているが、ちらっと言っただけで、具体的に何時にどこで、までは打ち合わせていない。
 そもそも覚えてるかな? と不安になり、深成は躊躇った後、メールを打った。

<おはようございます。凄い雪ですね>

 固い文章だ、と思いつつ、送信ボタンを押す。
 何となくどきどきしながら布団の中で丸まっていると、いきなり携帯が鳴った。
 着信だ。

 心臓が飛び出すほど驚いた深成は、布団とうさぎごと飛び上がった。
 慌てて画面を見ると、『真砂課長』の文字。

「も、もしもしっ」

『今起きたのか?』

 こっちはただでさえどきどきしていたところに、いきなりの着信で軽くパニック状態なのに、かけてきた本人は冷静そのものの低い声。
 当たり前といえば当たり前だが。

「おはようございます」

 まさかいきなり電話をかけてくるとは思っていなかったので、なかなか動悸が治まらない。
 とりあえず、深成は意味なくベッドの上に正座して、ぺこりと頭を下げた。

『もう十時だぞ。……明日はどうするんだ?』

「えっと……。ていうか課長。わらわ、メールでジャブ打ったのに、いきなり電話って。せめて一言、今から電話するよって教えてくれればいいのに」

『何言ってるんだか。どうせ電話するんだったら同じだろ』

「心の準備が必要なのっ」

『何の準備だよ。ちんたらメール打ってる間に電話出来るだろうが』

 典型的な面倒くさがりだ。
 B型だな、と思いつつ、深成は落ち着くために、うさぎを抱き締めて深呼吸した。

「えっと、明日なんだけど。おせち作りたいから、朝一でお邪魔しようと思ってたんだけど、今日この天気じゃ課長ん家まで行けるかどうか」

『そうだな。家に来るまでに埋もれられても困るし。この雪じゃ、迎えにも行けないしな』

「うん……。それに、課長ん家に行く前にお買い物はしないとだし。お買い物は今日のうちにしたいんだけど」

 ちょっとしゅん、と深成が言う。
 真砂はしばし黙っていたが、少し考えた後で口を開いた。

『お前の家は、掃除は済んだのか?』

「え? うん。それは昨日までに頑張った。綺麗になったよ」

 えへん、と胸を張る。
 見えているわけではないのだが。
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