傷ついてもいい
ケンカ
部屋に戻ってからも斎藤の震えていた感覚が、身体に残っていた。

きっと今まであまり泣けなかったんだろう。

男の人は世間体とか色々あるもんな。

佳奈は、自分が前妻の代わりに抱きしめられたことに嫌な気持ちは持たなかった。

むしろ斎藤が泣けて良かったと思っていた。


こんな自分でも、たまには、人の役に立つ。

まあ、たまたま名前が同じだったこともあるけれど、これも何かの縁だろう。

部屋で一人でビールを開けたところで、直己が帰ってきた。

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