傷ついてもいい
誤解
その日の夜。

日常ゴミを捨てるためにエレベーターを待っていた。

「花村さん」

背中から声を掛けられた。

声で斎藤だとわかった佳奈は、少し緊張して振り返る。

「あ、こんばんは」

「俺もゴミ捨てです」

斎藤は、ニコリと笑うとゴミ袋をちょっと上げる。

「「昨日は」」

声が重なって、顔を見合わせて笑う。

「なんか、すいませんでした」
斎藤は頭を下げた。

「いえいえ、全然大丈夫です」

佳奈は、斎藤の気持ちが少しは楽になっていれば、と思っていた。

「全然、気にされないのもちょっとさみしいなあ」

斎藤は、佳奈に笑いかけ「持ちますよ」

と半ば強引に佳奈のゴミ袋を持った。

「え!あ、大丈夫です!」

言う間もなくエレベーターが開く。

仕方なく手ぶらのまま佳奈は斎藤とエレベーターに乗り込んだ。




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