傷ついてもいい


ぼんやりしていると、電話がなった。

「もしもーし、お姉ちゃん?」
妹の由奈(ユナ)からだった。

佳奈と由奈はひとまわり離れた姉妹だった。

佳奈は母親を手伝い、よく由奈の世話をしていたのでまるで我が子のように愛情をもっている。

「由奈、久しぶりじゃない。元気?」

「今、駅に着いた!」

「は?何それ、何言ってんの?」

「だあかあらあ!今からそっち行くから」

プっと電話が切れ、佳奈は固まる。

由奈は、大人の中で甘やかされて育ったせいか少し奔放なところがあった。
今迄も何度か由奈のワガママに振り回されることがあった。

「ど、どうしよう!」

佳奈の実家からここまで2時間はかかる。
それもあって家族は、滅多にこちらにくることはない。

なので、これは想定外だった。


佳奈がパニックになっていると直己が風呂場から髪をガシガシ拭きながら出てきた。

Tシャツの前がダラリとはだけて鎖骨がのぞいている。

「どしたの?」

キョトンとする直己に、どうやって説明しようかと、あのね、と言いかけた時。

ピンポン、とインターフォンが鳴った。
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