傷ついてもいい
帰り道。渋滞にハマってしまった。

どうせ同じマンションに帰るんだし、ゆっくりと帰ろう、と斎藤は笑っているが、佳奈はさっきから直己のことが気になって仕方なかった。

直己には、今日、出掛けることを伝えていない。

今日もバイトだから帰りは10時頃だろうけれど。

時計は9時40分をさしていた。

やっぱり合鍵を作っておけばよかったと後悔する。

でも。

直己の言うように、斎藤とのことをちゃんと伝えて、出て行ってもらうほうがいのかな。

佳奈は、直己の居ない生活を思うだけで胸が苦しくなった。

私、耐えられるのかな。

斎藤への感情とは、全く違う。もう身体の一部のような直己の存在。

それを失うことの恐怖に佳奈は、耐えられる自信がなかった。
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