もうスキすぎて～ヤクザに買(飼)われた少女～

名探偵の髭

「純麗ちゃんが山さんを好きって気持ちは、きっと違うよ」



「はっ？」



リュウの言葉に怒りがふつふつと沸き上がる。



だって、だって、そうじゃない？



この気持ちに気づいてからは、毎日が苦しくて……



どこにいたって、何をしてたって満たされない心が寂しいって叫んでるのに……



そんなわたしの気持ちが違う？



「純麗ちゃんが山さんを好きなのはアレだよアレ」



「……」



最近、知り合ったばかりの人間にそんなこと簡単に言われたくない。



私の何年間もの寂しさを否定なんてされたくない。



「家族愛？んーうまい言葉が見つからないな。何て言うのかな……愛情とか同情とかで“恋”ってのとは違うと思うんだ」



「“恋”にだって愛情はあるじゃない」



「そうなんだけどさ……純麗ちゃんの場合は“恋”の愛情ではないんだよね」



「はっ？何？意味わかんないし」



私はリュウから、ふいっと視線を逸らした。



「純麗ちゃ～ん。怒らないでよ！」



「……」



「わかった！わかった！」



リュウのことは無視しようと意気込んでいたのに、突然出された大声のせいで、逸らしていた視線を戻してしまった。




「純麗ちゃんが好きって思ってる気持ちは依存だよ」



「はっ？」



“恋”の話をしていたのに、どんどんその話から遠ざかっている気がする。



「山さんだけが純麗ちゃんの家族でしょ？」



「まぁ……そうだけど」



「リュウ君が現れるまでは友達もいなかったでしょ？」



「……まぁ、ね」



「純麗ちゃんが大切にしたいって思えるのは、世界中に山さんだけだったわけだよ」



世界中に……とかってのは大袈裟に聞こえるけど、リュウの言っていることは間違ってない。



「きっと、最初は“パパ好き”みたいな感じで山さんのことを好きだったと思う。それはみんなが通る道でしょ？将来はパパのお嫁さんになるんだって言う女の子みたいに」



「そうなの？」



世間一般がそんなものだってことなんか知らない。



そんなこと、興味がないし、必要もないから。



「ほら、そんな風に純麗ちゃんは、世間をシャットアウトしてる。山さんがそう仕向けたのか、純麗ちゃんが望んだのかはわからないけど、２人だけの世界で生きてるでしょ？」



「わかんない」



「純麗ちゃんはそれが当たり前だからわからないよね。でも、秘密を共有しあったり、こんな風にホテルに住んだりすることに寄って、尚更そういう気持ちが強くなると思う」



確かに、昔から私は今のような考え方だったかと問われたら、答えはノー。



生きてくる過程でこうなった。



リュウの言っていることを肯定して考えるなら、私の考え方はとーちゃんに寄って作られたものなの？



だって、秘密を作ったのも、ホテルに住むことを決めたのもとーちゃん。



私はとーちゃんに仕向けられたってこと？