もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

今、何て言った?



“彼女”って言わなかった!?



聞き間違い!?



いや、確かに言った。



突然の自宅訪問にパニックだったからって、手土産なしに納得いかないからって、言わない言葉が聞こえるはずなんてない。



告白の返事聞いてないのに……



いきなり、彼女か……



えっ!?彼女!?



うん。彼女ってアレだよね!?



好きな人同士が付き合った時に呼び合う名称。



……てことは、私とジュンは、もう既に付き合ってるの!?



それは、マズイ。



だって、私はとーちゃんも好きなわけで、それはリュウ曰く“好き”ではないらしいんだけど、私の中ではまだハッキリと言い切れるものではないし。



他に好きな人がいるのにジュンと付き合うってどうなの!?



私の脳内は運動会をしてるような状態で、いや、戦争かもしれない。



どっちでもいいんだけど、兎に角、色んなことを一気に考えなきゃいけなくて、もう泣きそうなくらい、どうしていいかわからない状態だった。



「何してんだよ!ドア閉めれねぇから、さっさと来い」



イライラしたジュンの声にビクつきながら「はい!」と返事をして靴を脱いだ。



「ジュン、女の子には優しくしないとダメ。伸也さんみたく、優しいのが一番」



「アイツのどこが優しいんだよ!亜美がこうして具合が悪くなったって、駆けつけさえしないだろうが!」



「伸也さんは忙しいの」



「関係ねぇよ」



私が恐る恐る部屋の中へ入り、ドアを閉めると、そんなやり取りがされていた。


< 312 / 342 >

この作品をシェア

pagetop