バスボムに、愛を込めて
「ワ、ワンスモア、プリーズ。さっきより、スロウリイで……」
もはや英語とは言えないぐだぐだの言語を話すあたしにサファイヤさんも少し呆れ顔で、辺りをキョロキョロ見回し始めた。
ああ……コイツじゃ話になんねぇやって思われたんだきっと。
もしもすごい大口の取引相手になり得るバイヤーさんだったらどうしよう。
あたしのせいで、会社の利益が……
「――Is anything the matter with you?」
その時、背後からさらさら~っと流れるような英語が、何故か聞き覚えのある声で流れてきて、あたしの思考が一瞬止まった。
サファイヤさんの顔が急にぱっと明るいものになり、そりゃもうあたしなんかが聞き取れない速度で声の主と会話を始める。
そして最後にサンキュー(それだけは聞き取れた)と言うと、足早にこの場を離れた。
頭の回転がまったくもってスロウリイのままぽかんとするあたしに、今度は同じ声で日本語が降ってくる。
「お前な……あれくらいの英語もわかんねぇのかよ」