バスボムに、愛を込めて


「よく家に……?」


本郷さんの眉毛がピクッと反応した。

バカ孝二! 絶対変な風に勘違いされてるじゃない!


「家って……ただ孝二が押し掛けてくるだけじゃ――!」


噛みつくように反論すると、孝二があたしの口を塞ぐように言葉を被せた。


「はい、“よく”行きます。そうだ、先月行ったときにはあなたから電話が掛かってきて、美萌はテンパってましたね。俺に聞かれないようになのか、トイレに逃げ込んだりして……」

「先月……? 電話……?」


本郷さんの表情が、みるみるうちに険しいものに変わる。

あたしはその理由にバッチリ思い当たる節があるから、胸がちくちく痛み出すのを感じた。

孝二の言い方もどうかと思うけど、あの時その場しのぎの嘘をついてしまったのは紛れもなくあたしの口だ。

どうしよう。本郷さんはきっと、そういう嘘が大嫌いなひとだ……


「羽石」

「は、はい……」


抑揚のない声で呼ばれ、返事をしたものの本郷さんの顔を見ることができずにうつむく。


「兄がいると言うのは嘘か?」


それは嘘じゃない……だけど、あの日来ていたのは……


「お兄ちゃんがいるのは、本当です……でも、あの日は来てません。あのとき家にいたのは……ここにいる孝二、なんです」


消え入りそうな声で、あたしは白状した。

どうしてあんなくだらない嘘をついてしまったのかと、今さら後悔してももう遅い。

言い訳すら浮かばないよ。悪いのは完全にあたしだから……


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