バスボムに、愛を込めて


「あたし……あたしは、アンケートを作成します!」


そう、いつも新しいものを開発するときにはそこから始まる。

ターゲットとする年齢、性別に該当する社員を対象にアンケート調査を行い、それを踏まえたうえで、今求められている商品はどんなものなのか、流行なども加味して決めて行くのだ。

そんな基本的なことを忘れていたなんて、やっぱりあたし浮かれすぎていたのかも。

ああ、自分で自分に平手打ちしたい気分。

幸い、本郷さんはその答えで納得してくれたようで、やっと怖い顔を解除してくれた。


「……じゃ、キムチにはそれを頼む。俺は今から外に出て、実際に売られているバスボムをいくつか買ってくる」

「はい!」


キムチ、頑張ります!と敬礼のポーズをしてからふと思う。


「……って本郷さん! あたしの呼び名って、キムチに決定なんですか!?」


いくら若干Мっ気のあるあたしでも、それはいや……!


「嫌なら明日からは変な匂いさせるな」

「ぐ……了解、です」


何にも言い返せずに本郷さんが部屋を出て行くのを見送ると、あたしも棚からパソコンを出して早速アンケート作りの準備を始めた。

寧々さんも真剣にパソコンを睨んでいて、時折ノートに何かメモを取っている。

本郷さんもそうだけど、寧々さんも仕事ができそうな先輩でよかった。

やっぱり尊敬できる人たちの下で働くと、こちらのモチベーションもぐんと上がるもの。

よしっとひとり頷くと、あたしは張り切ってキーボードを叩き始めた。


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