バスボムに、愛を込めて
「……降りろ」
強く手首を引かれて降ろされたフロアは、孝二の言う通り改装中らしく、剥き出しになった壁や色々な資材が散らばり、薄暗くごちゃごちゃとしていた。
「ねぇ……孝二」
ずんずんと通路を進んでいく孝二に、勇気を出して話しかける。
「……なんだよ」
前を向いたままでうっとうしそうに言う孝二。
「そんな、“条件”なんかであたしに触れて……孝二は嬉しいの……?」
……あたしだったら、そんなのいや。いくら大好きな人でも、心のないカラダに触れたって、ただ人形を弄ぶみたいなものだもの。
きっと、お互いが傷つくだけ。
孝二がそんなこともわからない人だとは思えない。思いたくないよ……
黙ったまま足を止めた孝二があたしの方を振り返り、あたしは泣きそうになりながらも言葉を続ける。
「そうだ、孝二あの展示会の日、あたしにハンカチを貸してくれたじゃない。あれは泣いてるあたしに気づいたからでしょう? 孝二のそういう優しいとこ、あたしはたくさん知ってるよ。知ってるから、悲しいよ……こんなことするなんて」
「……ほんっとに馬鹿だなお前は」
孝二が自分の短い前髪に大きな手を差し込み、呆れたような目をあたしに向ける。